【第3話】映画デート|愛と恋

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## 第3話 映画デート

「じゃあ、今日はこれを見よう。」

俺が指差したのは、映画館の目立つ場所に飾られているポスターだった。

『愛と恋』

最近、テレビやSNSでもよく見かける話題の恋愛映画だ。

正直に言えば、俺はそれほど興味があるわけではない。

それでも、この映画を選んだ理由は一つ。

彼女が前から見たがっていたことを覚えていたからだ。

「えっ、本当に?」

彼女はポスターと俺の顔を交互に見る。

「話題の映画だよね! 私、見たかったんだ。」

目を輝かせる彼女を見て、思わず笑みがこぼれる。

以前の会話を覚えておいてよかった。

「恋愛映画っていいよね。」

チケット売り場へ向かいながら、彼女は楽しそうに話し始める。

「二人が少しずつ惹かれ合っていくところも好きだし、すれ違ってしまう場面も切なくて好き。」

「最後にちゃんと想いが伝わったときは、自分のことみたいに嬉しくなるの。」

映画はまだ始まっていないのに、彼女はすでに楽しそうだ。

「でも、男の子って恋愛映画に興味がない人も多いよね。」

少し心配そうに、こちらを見上げる。

「俺はそんなことないよ。」

そう答えると、彼女はほっとしたように微笑んだ。

「よかった。」

「一緒に見られて嬉しい。」

その表情を見られただけでも、この映画を選んだ意味はあった気がした。

上映開始。

館内の照明が落ち、スクリーンに物語が映し出される。

幼い頃から一緒に育った男女。

互いを大切に思いながらも、それが愛なのか恋なのか分からない。

やがて二人はすれ違い、別々の道を歩み始める。

タイトルのとおり、愛と恋の違いを問い続けるような物語だった。

「あなたを愛している。でも、恋をしているのかは分からない。」

そんな台詞が何度も交わされる。

俺には、少しありきたりな展開に見えた。

この後に誤解が生まれて、最後には気持ちが通じるんだろう。

だいたい先も読める。

正直、少し暇だな……。

そう思いながら、ふと隣へ目を向けた。

彼女はスクリーンをじっと見つめている。

その青い瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。

主人公たちがすれ違うたびに、悲しそうに眉を下げる。

二人の想いが少しずつ重なっていくと、今度は安心したように微笑む。

彼女にとっては、心に深く刺さる物語だったらしい。

映画の内容よりも、彼女の表情の方が気になってしまう。

それでも、楽しみにしていた作品をこうして一緒に見られたのなら、それで十分だ。

この映画を選んでよかった。

心からそう思った。

上映終了。

劇場の照明がゆっくりと明るくなる。

彼女は目元を指先でそっと拭いながら、こちらを向いた。

「最後はハッピーエンドでよかったね。」

「そうだね。」

「途中はどうなるかと思ったけど、ちゃんと気持ちが伝わってよかった。」

安心したように息を吐いた後、彼女は少し恥ずかしそうに笑う。

「私、こういう映画が好きなんだけど……。」

「涙腺が緩いのか、すぐ泣いちゃうんだよね。」

「隣で泣いてたの、気付いた?」

「少しだけ。」

そう答えると、彼女はますます恥ずかしそうに頬を赤くした。

「やっぱり見られてたんだ……。」

楽しんでくれたようでよかった。

「俺も恋愛映画はたまに見るけど、『愛と恋』はほかの作品より面白かったよ。」

彼女の表情がぱっと明るくなる。

「本当?」

「よかった。また一緒に映画を見に来ようね。」

「次も私が見たい映画を選んでいい?」

すでに次の約束を考えている彼女を見て、自然と笑みがこぼれた。

「もちろん。」

映画館を出る。

時計を見る。

16:00。

夕食の約束までは、まだ少し時間がある。

「この後どうする?」

彼女が期待するような表情でこちらを見る。

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