## 第3話 映画デート
「じゃあ……。」
上映作品のポスターを見渡しながら、俺は一つの作品を指差した。
「これにしよう。」
『バトルコマンドー ~復讐の戦士~』
彼女はタイトルを見て、小さく笑う。
「ふふっ。」
「男の子ってこういう映画好きだよね。」
「バレた?」
思わず笑い返す。
実はこの映画、ずっと公開を楽しみにしていた。
主演は世界的アクション俳優、アドルフ・ネイガー。
圧倒的な肉体と豪快なアクションで、どんな敵でも真正面からねじ伏せる。
爆発。
銃撃戦。
そして決め台詞。
昔からこのシリーズが大好きだった。
気付けば俺は、作品の魅力を夢中で語っていた。
「あっ、ごめん。」
「また語りすぎた。」
少し恥ずかしくなって頭をかく。
すると彼女は優しく笑った。
「ううん。」
「私、アドルフ・ネイガーの映画って見たことないから楽しみ!」
その一言だけで、なんだか嬉しくなった。
◇
上映開始。
館内が暗くなる。
スクリーンいっぱいに映し出される大迫力の映像。
爆発音が劇場に響き渡る。
俺は映画に夢中になっていた。
……でも。
途中から、映画以上に気になるものがあった。
隣に座る彼女だ。
流石に大きな声は出さない。
けれど。
敵を倒すたびに、小さく拳を握る。
驚く場面では肩がぴくっと動く。
そして――
アドルフ・ネイガーが最後の敵を倒した瞬間。
彼女は誰にも気付かれないくらい小さく。
「よしっ!」

とガッツポーズをしていた。
思わず吹き出しそうになる。
普段は穏やかで優しい彼女。
そんな彼女が、まるで子どものように映画を楽しんでいる。
今日は意外な一面を見ることができた。
それだけでも、この映画を選んで良かったと思えた。
◇
上映終了。
劇場の照明がゆっくり明るくなる。
彼女は満面の笑みだった。
「楽しかった!」
「私、アドルフ・ネイガーのファンになっちゃった!」
そう言うと、彼女は小走りで売店へ向かっていく。
「パンフレット買ってくる!」
嬉しそうな後ろ姿を見ながら、自然と笑みがこぼれた。
少し待っていると、パンフレットを大事そうに抱えた彼女が戻ってきた。
「宝物が増えちゃった。」
その笑顔は、映画が始まる前よりもずっと輝いて見えた。
◇
映画館を出る。
時計を見る。
16:00。
夕食の約束までは、まだ少し時間がある。
「この後どうする?」
彼女が期待したような表情でこちらを見る。


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